知っておきたい「子供の歯並び矯正」の大きなメリット
3歳ころまでに生え揃う乳歯の数は20本です。その後、6歳ころから中学生ころまでに永久歯に生え変わっていきます(親知らずを除いて28本)。1本ごとの歯の大きさもより大きく、全ての永久歯がきれいに並ぶためには、土台となる顎が十分な大きさに成長する必要があります。最近では、顎の小さなお子様や、歯の本数がもともと少ないお子様が増えているようです。
子供の歯並び矯正のメリットは、顎の大きさや上下の位置関係などの成長をよりスムーズに促すことができることです。大人の骨格へと成長していく段階で軌道修正をしておくことにより問題が大きくなるのを防ぐことを目標にします。大人になってから矯正を始めるよりも治療の負担が少ないことも多いと思われます。
◆子供のころから矯正を始めると大きなメリットが
歯並びが悪いことを歯医者さんでは不正咬合と呼んでいます。重なって生えている「叢生(そうせい)」、上前歯が飛び出ている「上顎前突(じょうがくぜんとつ)」などいろいろなタイプに分けられますが、不正咬合という言葉でまとめています。
この不正咬合の芽は、実は乳歯のころから始まっていることが多いようです。例えば前歯の場合、乳歯のころに歯と歯の間に隙間があれば、乳歯より大きな永久歯が生えてきてもきれいに収まるスペースが確保できます。ところが、乳歯のころからデコボコに生えていると、永久歯が収まりきらずに、将来「叢生」になってしまう可能性が高くなってしまうのです。
小さな子供のころはちょっとした違いでも、成長するにつれてだんだんズレが大きくなり歯並びの大きな違いとして現れます。これを大人になってから矯正しようとすると、既に顎の形は決まっているので収まりきらない歯を抜いたり、外科手術が必要になったりすることもあり、なかなか大変です。そうなる前に、顎の骨の成長を軌道修正してあげるのが子供の歯並び矯正なのです。
子供のころから歯並び矯正をすることのメリットとして、まず治療の負担が小さいことが挙げられます。子供の場合、顎の骨は成長途中なので健全な成長を促すと、バランスよく発達してくれることがあります。すると永久歯の矯正で大掛かりな治療が必要になる可能性をぐっと減らすことができるのです。
さらに、歯並びを矯正することはむし歯や歯周病の予防にもつながります。一番歯磨きがしやすいのは、きれいな歯並びであることは言うまでもありません。歯みがきが苦手という子供の中には、歯並びが悪いせいで磨きにくいのが原因だということもよくあります。矯正は、将来の自分の歯を守るための治療だともいえそうです。
この他にも、実は歯並びはスポーツパフォーマンスや姿勢とも密接に関わっているといわれていてきれいな歯並びはいろいろなところで私たちの生活を陰から支えているのです。
◆早めに矯正を始めたいタイプがある
子供の不正咬合にはどのようなタイプがあるのでしょうか。矯正治療の対象になる不正咬合の代表例を紹介しましょう。これらの不正咬合は成長するとともにだんだんズレが大きくなることもあります。当てはまるものはありませんか?
○叢生(そうせい)
歯がねじれて生えていたり、重なり合って生えていたりする状態です。上の犬歯(糸切り歯)だと俗に八重歯と呼ばれることもあります。将来、歯が並ぶのに必要なスペースが足りなくなりやすい傾向があります。
○上顎前突(じょうがくぜんとつ)
上の前歯が下の前歯に対して飛び出している状態です。俗に出っ歯と呼ばれることもあります。指しゃぶりのクセが長く残っている子供に多い傾向があります。
○下顎前突(かがくぜんとつ)
上顎前突とは反対に、下の前歯が上の歯よりも前に出ている状態です。受け口もこれに当てはまります。下顎を出すクセがあったり、遺伝的に下顎が大きかったりする傾向があります。
○開咬(かいこう)
口を閉じたとき、奥歯はかみ合っているのに前歯が開いてしまう状態です。口呼吸が影響している場合もあります。口を開けると前歯の隙間から舌が見えてしまうのが特徴です。
○過蓋咬合(かがいこうごう)
噛みあわせの重なりが過度に大きな状態です。いつも下を向いて遊んでいる子供に多い傾向があります。放置すると顎を動かしにくくなったり、大きく口を開けにくくなったりすることもあります。
○交叉咬合(こうさこうごう)
左右どちらか、または両方が反対にかみ合っている状態です。顎の骨の成長に影響を与えてしまうこともあります。
◆子供の矯正のデメリットも
子供の時に行う矯正を行う場合、いくつかデメリットもあります。
- お口の中のお手入れが必要になるため、本人や保護者の方々の負担が増えること
(通常の歯磨きに加えて装置周辺のブラッシング(歯磨き)の工夫など)
- 治療の理解を子供に求めるのは難しいことがあること
(装置による違和感を不快に思い、装置を着けないなど)
- 成長に個人差があるため、成長に合わせて長期間見守る必要があること
(短期間では終わらず長く経過をみることになることも)
などがあげられます。
このように矯正を行うには、いろいろ考えることが必要です。矯正治療は、永久歯が生え揃ってからでも始められます。状態によっては、歯が生え揃ってから始めたり、先に舌のクセを抜いてから行ったほうがいい場合もあります。
ただし、不正咬合のうち、下顎前突や交叉咬合は顎の骨の影響が大きいので、乳歯のうちに早めに矯正を始めたほうが良いこともあります。不正咬合に気がついたり、心配な点がございましたら、お気軽にご相談ください。