むし歯治療

むし歯とは

歯の表面に付着している汚れ(プラーク)の中には、むし歯の原因菌(以下「細菌」)が存在しています。細菌が食べかすなどを餌にして、酸を出すと、歯が溶けはじめます。これがむし歯の始まりです。どんなに丁寧に歯を磨いている人のお口の中にも細菌が存在します。そのため、丁寧なセルフケアとともに、歯科医院で定期的に汚れを取り除くことが大切です。むし歯の要因(なりやすさ)はさまざまに分かれているので、個々人のリスクを考えたうえで予防を進めていきます。

プラーク(歯垢)とは

磨き残しがあると、歯の表面や歯と歯ぐきの境目などにネバネバした白い塊が付着します。これをプラーク(歯垢)と呼び、わずか1mgのプラークに、1億個以上の細菌が生息していると言われています。

むし歯になる4つの要因

宿主要因、細菌要因、食事要因、時間要因、これらが重なるとむし歯のリスクが高くなります。

  • 宿主要因

    歯の質(歯の成熟具合・固さ)、唾液(唾液の量や性状)、歯の位置(清掃が困難でプラークが付きやすい位置)などが関連しています。

  • 細菌要因

    細菌の出す酸により、歯が溶かされます。細菌が、お口の中に多いと、むし歯のリスクを高めます。

  • 食事要因

    特に炭水化物や砂糖(ショ糖)を頻繁に摂取する方は要注意です。 細菌の出す酸により、歯が溶かされます。この酸がつくられる頻度が多いと、むし歯のリスクを高めます。

  • 時間要因

    お口の中に飲食物の存在している時間が長かったり、不衛生な口腔環境の時間が続いたりしている方ほど、むし歯の発症リスクは高くなる傾向があります。

むし歯になりやすい口腔環境とは

  • 食べカスが長時間残っている
  • 歯が弱い、柔らかい
  • 細菌の量が多い

「食べカスが残っている」「歯の質が弱い」「細菌が多く潜んでいる」これら三つが揃うと、よりむし歯が発生・進行しやすくなります。これらは日頃のセルフケアと定期的なメインテナンス(お掃除、フッ素塗布など)によってコントロールできる要因です。 また、細菌は人のお口から移ります。赤ちゃんの頃から細菌を増やさないように気をつける事で、「細菌の量」を減らすことができます。

むし歯の進行度

  • 要観察歯
    (C0)

    細菌が排出する酸によって、カルシウムやリンが溶け出し、歯の表面が白く濁ったり、茶色に見えたりします。痛みなどの自覚症状はなく、歯の表面にも穴はまだあいていません。基本的には丁寧なセルフケアとフッ素を用いて再石灰化を促します。

  • エナメル質のむし歯
    (C1)

    脱灰が進行し、歯の表面(エナメル質)に穴があいた状態のむし歯です。表面が灰白色、黄褐色、黒褐色などに変化します。多くのケースで痛みはまだ感じません。

  • 象牙質のむし歯
    (C2)

    細菌が歯の内部の象牙質にまで達した段階です。甘いもの、冷たいもの、熱いものなどに触れた時、痛みが生じます。

  • 歯の神経のむし歯
    (C3)

    根管内の歯髄と呼ばれる部分にまで細菌感染が生じている状態です。歯髄は神経や血管が通っているため、何もしてないときでもズキズキと激しく痛むようになります。

  • 歯の根のむし歯
    (C4)

    歯が崩壊し、根のみになった状態です。痛みや腫れを伴うことも多く、治療は抜歯になります。悪化すると歯の周りの粘膜や骨にも影響を及ぼす可能性があります。

むし歯の治療

むし歯の治療は、細菌の酸により歯が溶けた部分を取り除き、人工的な材料で修復することです。
「細菌が染み込んでいる部分を削って除去する」「削って凹んだ部分を補修する」の2つの段階に分かれます。

  1. 細菌が染み込んでいる範囲(削る範囲)が、 歯髄(神経が入っている部分)まで

    • 到達していない
  2. 細菌が染み込んだ部分を削って除去します

    削った部分(凹み)を埋める必要があります。
    その範囲は、

    • 小さい
    • 大きい
  3. レジン充填

    直接、口の中で 埋める治療です。

    インレー修復

    型取りをして詰め物を作製します。

  1. 細菌が染み込んでいる範囲(削る範囲)が、 歯髄(神経が入っている部分)まで

    • 到達している
  2. 細菌が歯の深くに及んでいるということです

    根(歯髄)の部分まで消毒する根の治療・神経の治療が必要になります。また、削る範囲も大きくなり、歯は小さくなってしまいます。根の治療をしたあと、その歯は、

    • 利用できる
    • 利用できない
  3. クラウン修復

    型取りをして
    被せ物を作製します。

    抜歯・歯を補う治療

    被せ物を支えられないほどに崩壊した歯は、細菌繁殖の温床になりうるため、適応は抜歯です。その後は、ブリッジや入れ歯、インプラントなどを検討します。

初期のむし歯:CR(コンポジットレジン)治療

むし歯を取り除いた部分に歯科用のプラスチック材料を直接つめて、LED照射器で固める治療法です。歯を削る量も少なく済むことから、小さなむし歯の治療に行われています。また、保険適用でリーズナブルな価格かつ、白い素材で目立ちにくいのもメリットです。一方で、強度が弱い点、経年劣化で素材が若干変色するなどのデメリットもあります。

中程度のむし歯:詰め物(インレー)

むし歯の大きさが小~中程度の場合は、「インレー修復」を行います。むし歯部分を取り除いて、人工の詰め物を入れる治療法です。詰め物は、保険適用の金銀パラジウム合金や天然歯に近い質感を持つセラミックなど、幅広い種類の素材を取り揃えております。

詰め物(インレー)

重度のむし歯:根管治療+被せ物(クラウン)

細菌が歯の根まで到達している場合は、歯の根の治療(「根管治療」)を行います。根管は暗く複雑な構造をしているのが特徴です。そのため、歯の深部(歯根)まで及んだ細菌を取り除くには高度な技術が要求されます。根管治療後は、その歯に「クラウン」を装着して形態を取り戻します。

根管治療被せ物(クラウン)

むし歯菌の侵入範囲を判別するための「う蝕検知液」

むし歯の治療は、細菌の侵入している箇所を取り除くのが基本です。その際、細菌に感染した歯質が柔らかくなったり、色が変わったりする特徴を治療の手がかりとします。しかし、目と手指の感覚だけで細菌感染の状況を把握するのは困難です。そこで、当院ではむし歯治療の際には、感染部位を染め出してくれる「う蝕検知液」を使用しております。

検知液でのむし歯確認

検知液は細菌感染した部位にのみ色が浮き出ます。そのため、感染してない歯質を残しつつ、感染部位を残らず取り除くことが期待できます。健康な歯質を残すためにも、う蝕検知液の使用は欠かせません。

大事な歯を守るために「予防」から始めましょう

歯を失う原因として、多いのが「むし歯」や「歯周病」、それらに関連した歯の破折です。
特にむし歯や歯周病は初期段階だと自覚症状がほとんどありません。「歯に穴があいて、痛みがある」「歯がグラグラしている」などの自覚症状が出てからの来院だと、虫歯や歯周病がある程度進行した状態であることも少なくありません。歯を残すことが困難になることもありえます。

そのため当院では、患者様のお口の健康を守り、天然歯を保ち続けられるよう、さまざまな予防治療への取り組みを行っています。ぜひ定期的なメインテナンスを受けていただけたらと思います。

お口のケア