歯とお口の豆知識

むし歯治療根管治療

大きなむし歯になっても「抜かない治療」で歯を守る

「歯がズキズキと痛い」
「歯の根元の歯ぐきが腫れてきた」

冷たい物が時々しみるようなむし歯ならまだしも、ここまでひどい症状が出てしまうと「ひょっとしたら歯を抜かないといけないのでは?」と不安になってしまうかもしれません。

むし歯はある程度の大きさのものまでは削って詰めるという治療ができますが、歯の神経に達する深いむし歯は、そのままにしておくと歯を抜かなくてはいけなくなることもあります。

それでも、まだ諦めるのは早いかもしれません。歯の根の治療をすることで、歯を残せる可能性があります。その治療について詳しく解説していきます。

♦歯を抜かずに守る「根管治療」とは

冷たい物だけではなく、熱い物までしみるようになったり、激しい痛みや腫れがずっと続くようになると、むし歯が歯の深いところまで進んでいることが多いと思います。

歯で神経や血管がある部分を「根管」といいます。そしてそこにある神経や血管を「歯髄」といいます。根管の中に汚れや細菌が入り、歯髄にトラブル(痛みや腫れなど)が起きたために根管の中を消毒する治療を「根管治療」と言います。

歯髄の活力が少しでもある場合には、冷たい物、熱い物に対して痛みを訴えることが多く、歯髄の機能が失われている場合には、歯ぐきの腫れや咬んだ時の痛みを訴えることが多いようです。放置しておくと、顎まで大きく腫れてしまうこともあり、歯を抜かなくてはいけなくなることもあります。

「根管治療」はさながら大切な自分の歯を抜かずに治す“最後の砦”の治療とも言えます。(もちろん他の治療も大事です!) 「根管治療」後は、残った歯の上にかぶせ物を作製していきます。

♦「歯を守る」根管治療の流れ

「根管治療」という名前が表しているように、「根管」は歯の根の中にある管です。この管は歯の根の先からあごに通じています。

そのため、むし歯が根管まで到達すると、細菌は根管を通ってあごの中に達することもあります。根管治療とは、細菌に侵された根管の中をきれいにすることです。

○根管治療の大まかな流れ (治療にはラバーダムを用います)

(1)むし歯の部分を取り除きます。根管の位置を確認します。

(2)根管の上部の太いところから、先の細いところまで、ファイルという細い器具で根管の中をきれいにしていきます。その際、専用の消毒薬を使用します。

(3)根管の中をきれいにした後、根管に充填材を詰めます。

(4)残っている歯の上にかぶせ物などをして完了です。
(この治療は「根管治療」とは言わず、「補綴治療(かぶせ物の治療)」と言います)

♦自費の根管治療とは

根管は非常に細く、形態も複雑なため、治療には細心の注意が必要です。また根管は、直視できない部分もあり、その処置はとても困難なものと言われています。
そのため、感染部分を除去できなかったり、十分に消毒ができなかったことにより、のちに再治療が必要なケースもしばしばみられます。
再治療が必要な歯に対し、やみくもに治療を行っても、治療が奏功するとは限らず、結局は歯を抜かないといけなくなる場合も決して少なくありません。そのため、いろいろな道具や手段を使って治療の成功率を高めていく取り組みが非常に重要です。

当院ではより精密な治療を行えるように次のような取り組みを行っています。

○当院の根管治療の成功率を上げる取り組み
・CT撮影(必要に応じて)
CT画像を撮影することで、根の形や骨の状態をより正確(三次元的)に診断できます
・ラバーダム
治療する歯以外をゴムシートで覆うことで、唾液と一緒に細菌が入り込むことを防ぎ、消毒の効果を高めます。また、器具や薬剤が口の中に落ちることも防ぎます。・マイクロスコープ
顕微鏡で拡大しながら治療をすることで、より精密な治療を行います・ニッケルチタン製のファイル
必要に応じて柔軟性のある器具を使うことで、曲がっている根の先まで消毒しやすくします・垂直加圧根管充填法
根管の中に詰める充填材が隅々まで隙間なく行き渡るように工夫しています・時間をかけた消毒
マイクロスコープを活用しながら、より丁寧に時間をかけて消毒を行います

日本の歯科医院ではラバーダムを使わないところも少なくありません。また、マイクロスコープを使用しているところも、それほど多くはありません。このような工夫は確かに根管治療の成功率を高めるためには必要ですが、時間も手間もかかるため、保険診療ではなかなか導入できないようです。

歯の根の部分というのは、その後のかぶせ物を支えるという非常に大切な役割を担っています。どんなにきれいなかぶせ物が入ったとしても、その支えとなる歯の根に不具合があると、せっかくのかぶせ物もその機能を発揮できません。
そのため、より良い根の治療を行うためには、成功率を上げるための条件がそろった治療が必要と考えております。